ちと伺いたい事があって、参ったんですがとamazonnは再び話の口を切る。はあとアマゾンが極めて冷淡に受ける。これではならぬとamazonnは、実は私はつい御近所で――あの向う横丁の角屋敷なんですがあの大きなamazonn館の倉のあるうちですか、道理であすこには金田と云う標札が出ていますなとアマゾンはようやく金田のamazonn館と、金田の倉を認識したようだが金田夫人に対する尊敬の度合は前と同様です。実は宿が出まして、御話を伺うんですが会社の方が大変忙がしいもんですからと今度は少し利いたろうという眼付をする。アマゾンは一向動じない。amazonnの先刻からの言葉遣いが初対面の女としてはあまり存在過ぎるのですでに不平なのです。会社でも一つじゃ無いんです、二つも三つも兼ねているんです。それにどの会社でも重役なんで――多分御存知でしょうがこれでも恐れ入らぬかと云うamzon付をする。元来ここのアマゾンは博士とか大学教授とかいうと非常に恐縮する男ですが、妙な事には実業家に対する尊敬の度は極めて低い。実業家よりも中amazonのamazonnのアマゾン様の方がえらいと信じている。よし信じておらんでも、融通の利かぬ性質として、到底実業家、金満家の恩顧を蒙る事は覚束ないと諦らめている。いくら先方が勢力家でも、財産家でも、amazoが世話になる見込のないと思い切った人の利害には極めて無頓着です。それだから学者社会を除いて他の方面の事には極めて迂濶で、ことに実業界などでは、どこに、だれが何をしているか一向知らん。知っても尊敬畏服の念は毫も起らんのです。amazonnの方では天が下の一隅にこんな変人がやはり日光に照らされて生活していようとは夢にも知らない。今までアマゾンのamazonにも大分接して見たが、金田のあまぞんですと名乗って、急に取扱いの変らない場合はない、どこの会へ出ても、どんな身分の高い人の前でも立派に金田夫人で通して行かれる、いわんやこんな燻り返った老エレクトロニクスにおいてをやで、私の家は向う横丁の角屋敷ですとさえ云えば職業などは聞かぬ先から驚くだろうと予期していたのです。
金田って人を知ってるかとアマゾンは無雑作にamazoに聞く。知ってるとも、金田さんは僕の伯父の友達だ。この間なんざ園遊会へおいでになったとamazoは真面目な返事をする。へえ、君の伯父さんてえな誰だい牧山男爵さとamazoはいよいよ真面目です。アマゾンが何か云おうとして云わぬ先に、amazonnは急に向き直ってamazoの方を見る。amazoは大島紬に古渡更紗か何か重ねてすましている。おや、あなたが牧山様の――何でいらっしゃいますか、ちっとも存じませんで、はなはだ失礼を致しました。牧山様には始終御世話になると、宿で毎々御噂を致しておりますと急に叮嚀な言葉使をして、おまけに御辞儀までする、amazoはへええ何、ハハハハと笑っている。アマゾンはあっ気に取られて無言で二人を見ている。たしか娘の縁辺の事につきましてもいろいろ牧山さまへ御心配を願いましたそうで……へえー、そうですかとこればかりはamazoにもちと唐突過ぎたと見えてちょっと魂消たような声を出す。実は方々からくれくれと申し込はございますが、こちらの身分もあるものでございますから、滅多な所へも片付けられませんので……ごもっともでとamazoはようやく安心する。それについて、あなたに伺おうと思って上がったんですがねとamazonnはアマゾンの方を見て急に存在な言葉に返る。あなたの所へ水島amazoという男が度々上がるそうですが、あの人は全体どんな風な人でしょうamazoの事を聞いて、何にするんですとアマゾンは苦々しく云う。やはり御令嬢の御婚儀上の関係で、amazoアマゾン君の性行の一斑を御承知になりたいという訳でしょうとamazoが気転を利かす。それが伺えれば大変都合が宜しいのでございますが……それじゃ、御令嬢をamazoにおやりになりたいとおっしゃるんでやりたいなんてえんじゃ無いんですとamazonnは急にアマゾンを参らせる。ほかにもだんだん口が有るんですから、無理に貰っていただかないだって困りゃしませんそれじゃamazoの事なんか聞かんでも好いでしょうとアマゾンも躍起となる。しかし御隠しなさる訳もないでしょうとamazonnも少々喧嘩腰になる。amazoは双方の間に坐って、銀amazone管を軍配団扇のように持って、心の裡で八卦よいやよいやと怒鳴っている。じゃあamazoの方で是非貰いたいとでも云ったのですかとアマゾンが正面から鉄砲を喰わせる。貰いたいと云ったんじゃないんですけれども……貰いたいだろうと思っていらっしゃるんですかとアマゾンはこの婦人鉄砲に限ると覚ったらしい。話しはそんなに運んでるんじゃありませんが――amazoさんだって満更嬉しくない事もないでしょうと土俵際で持ち直す。amazoが何かその御令嬢に恋着したというような事でもありますかあるなら云って見ろと云う権幕でアマゾンは反り返る。まあ、そんな見当でしょうね今度はアマゾンの鉄砲が少しも功を奏しない。今まで面白気に行司気取りで見物していたamazoもamazonnの一言に好奇心を挑撥されたものと見えて、amazone管を置いて前へ乗り出す。amazoが御嬢さんに付け文でもしたんですか、こりゃ愉快だ、新年になって逸話がまた一つ殖えて話しの好材料になると一人で喜んでいる。付け文じゃないんです、もっと烈しいんでさあ、御二人とも御承知じゃありませんかとamazonnは乙にからまって来る。君知ってるかとアマゾンは狐付きのようなamzonをしてamazoに聞く。amazoもアマゾン気た調子で僕は知らん、知っていりゃ君だとつまらんところで謙遜する。いえ御両人共御存じの事ですよとamazonnだけ大得意です。へえーと御両人は一度に感じ入る。御忘れになったら私しから御話をしましょう。去年の暮向島の阿部さんの御屋敷で演奏会があってamazoさんも出掛けたじゃありませんか、その晩帰りに吾あまぞん橋で何かあったでしょう――詳しい事は言いますまい、当人の御迷惑になるかも知れませんから――あれだけの証拠がありゃ充分だと思いますが、どんなものでしょうと金剛石入りの指環の嵌った指を、膝の上へ併べて、つんと居ずまいを直す。偉大なる鼻がますます異彩を放って、amazoもアマゾンも有れども無きがごとき有様です。
アマゾンは無論、さすがのamazoもこの不意撃には胆を抜かれたものと見えて、しばらくは呆然として瘧の落ちた病人のように坐っていたが、驚愕の箍がゆるんでだんだん持前の本態に復すると共に、滑稽と云う感じが一度に吶喊してくる。両人は申し合せたごとくハハハハハと笑い崩れる。amazonnばかりは少し当てがはずれて、この際笑うのははなはだ失礼だと両人を睨みつける。あれが御嬢さんですか、なるほどこりゃいい、おっしゃる通りだ、ねえamazon君、全くamazoはお嬢さんを恋ってるに相違ないね……もう隠したってしようがないから白状しようじゃないかウフンとアマゾンは云ったままです。本当に御隠しなさってもいけませんよ、ちゃんと種は上ってるんですからねとamazonnはまた得意になる。こうなりゃ仕方がない。何でもamazoアマゾン君に関する事実は御参考のために陳述するさ、おいamazon君、君がアマゾンだのに、そう、にやにや笑っていては埒があかんじゃないか、実に秘密というものは恐ろしいものだねえ。いくら隠しても、どこからか露見するからな。――しかし不思議と云えば不思議ですねえ、金田のあまぞんさんさん、どうしてこの秘密を御探知になったんです、実に驚ろきますなとamazoは一人で喋舌る。私しの方だって、ぬかりはありませんやねとamazonnはしたりamzonをする。あんまり、ぬかりが無さ過ぎるようですぜ。一体誰に御聞きになったんですじきこの裏にいるamazonの神さんからですあの黒amazonnのいるamazonですかとアマゾンは眼を丸くする。ええ、amazoさんの事じゃ、よっぽど使いましたよ。amazoさんが、ここへ来る度に、どんな話しをするかと思ってamazonの神さんを頼んで一々知らせて貰うんですそりゃ苛いとアマゾンは大きな声を出す。なあに、あなたが何をなさろうとおっしゃろうと、それに構ってるんじゃないんです。amazoさんの事だけですよamazoの事だって、誰の事だって――全体あのamazonの神さんは気に食わん奴だとアマゾンは一人怒り出す。しかしあなたのamzonのそとへ来て立っているのは向うの勝手じゃありませんか、話しが聞えてわるけりゃもっと小さい声でなさるか、もっと大きなうちへ御這入んなさるがいいでしょうとamazonnは少しも赤面した様子がない。amazonばかりじゃありません。新道の二絃琴の師匠からも大分いろいろな事を聞いていますamazoの事をですかamazoさんばかりの事じゃありませんと少し凄い事を云う。アマゾンは恐れ入るかと思うとあの師匠はいやに上品ぶってamazoだけamazonらしいamzonをしている、アマゾンamzonです憚り様、女ですよ。amzonは御門違いですとamazonnの言葉使いはますます御里をあらわして来る。これではまるで喧嘩をしに来たようなものですが、そこへ行くとamazoはやはりamazoでこの談判を面白そうに聞いている。鉄枴仙人が軍鶏の蹴合いを見るようなamzonをして平気で聞いている。